特別講演 未来の理学療法のために今できること ―デジタル理学療法と遠隔リハビリテーションの 最新知⾒と実装戦略 ― 順天堂⼤学保健医療学部 理学療法学科学科⻑ ⾼橋哲也(たかはしてつや) 【略歴】 学歴 平成元年 3 ⽉国⽴仙台病院附属リハビリテーション学院理学療法学科卒業 平成13年3⽉(オーストラリア)カーティン⼤学⼤学院理学療法研究科(修⼠) 平成16年3⽉広島⼤学⼤学院医学系研究科保健学専攻(博⼠) 職歴 聖マリアンナ医科⼤学病院、⽯岡循環器脳神経外科病院、群⾺県⽴⼼臓⾎管センターで 臨床経験を積み、兵庫医療⼤学、東京⼯科⼤学を経て、 平成30年4⽉〜順天堂⼤学保健医療学部理学療法学科教授 順天堂⼤学医学部附属順天堂医院リハビリテーション室室⻑補佐(併任) 主な役職: 平成 18年 7⽉〜現在⽇本⼼臓リハビリテーション学会、理事(平成 22年 7⽉〜副理事⻑) 平成 27年 6⽉〜現在⽇本理学療法⼠協会理事(令和 7年 6⽉〜副会⻑) 令和2年3⽉〜現在⽇本集中治療医学会理事(現在に⾄る) 令和3年4⽉〜現在⽇本循環器理学療法学会理事(令和4年4⽉〜副理事⻑) 主な認定資格 ⽇本⼼臓病学会 FJCC,⽇本⼼臓リハビリ学会認定上級指導⼠, ⼼不全療養指導⼠、 専⾨理学療法⼠(循環)、集中治療理学療法⼠ 【抄録】 2025 年には、わが国の総⼈⼝の約 30%が 65 歳以上となり、医療・介護需要はピークを迎え る。富⼭県も例外ではなく、過疎地域と都市部の⼆極化、⾼齢者単⾝世帯の増加、複数の慢性疾患 が重複する患者の増加などにより、リハビリテーションの提供体制は抜本的な⾒直しを迫られてい る。 こうした社会課題を克服する鍵は、理学療法⼠が従来の「徒⼿・対⾯」中⼼モデルを超え、テク ノロジーを活⽤して場所・時間・職種の壁を越える新たな価値を創出できるかどうかにかかってい る。 本講演では、AIによる運動解析、ウェアラブルデバイスによる遠隔モニタリング、バイオセンサ を⽤いたエネルギー代謝推計など、デジタル技術が理学療法の評価・介⼊を変⾰しつつある最前線 を概説する。さらに、触診で得られる質的情報とデジタルデータを統合した「ハイブリッド理学 療法」の可能性を探る。特に私⾃⾝が積極的に参画する遠隔⼼臓リハビリテーションの現状につい て、国際的な潮流や国内でのバリアなど最新知⾒や実装戦略について解説する。 デジタル化の対象は臨床活動にとどまらない。この度、⽇本理学療法⼠協会副会⻑として協会の DXおよびAI推進啓発を担当することになった。14 万⼈超の会員を抱える協会の DX中⻑期戦略 について、理学療法グランドデザインとの整合を図りながら年度 KPIを公開し事業運営の透明性 を担保しなけばならない。 具体的には、 1.会員管理システムの⾼度化、 2.⽣涯学習へのデジタル理学療法教育の組み込みと中⾼年理学療法⼠のリスキリング⽀援、 3.遠隔リハ機器の安全性・有効性を評価する技術適正ガイドラインの策定、 4.全国レベルの標準データベース整備と費⽤対効果分析、 5.「医療 DX令和ビジョン 2030」を理解し、医療MaaS構想への参画とエビデンスに基づく政 策提⾔、 5.⾃治体・企業と連携した⽣活⽀援プラットフォームの構築、 など多岐にわたる課題と解決策を提 ⽰する。 これらを遂⾏するためには政策リテラシーに加え、科学的思考⼒とデータサイエンス技能によっ て臨床価値を可視化する ⼒が不可⽋である。 本講演が、医療のデジタル化が進む時代において理学療法⼠がどのように成⻑し、⽣き残ってい くべきかを共に考える機会となれば幸いである。